三代目 小林 徹
江面晴吉商店を創業した祖父の孫として生まれた僕にとって、祖父母が働いている姿を見る事は、当たり前の日常であり、その仕事を手伝いながら
「やはり僕も後を継ぐ事になるのだろうな」と、思って学生時代を過ごしていました。
社会人(小売業、保育士として働いた)になっても、時間のある時にはその仕事を手伝う事は続きました。
日常的に、額に汗を流し、真剣な眼差しで炭火と、それに焼かれるせんべいと向き合い、良いものが出来ると喜ぶ祖父母の姿を見る事、仕事が終わると手ぬぐいで汗をぬぐいながら「ご苦労様」とほっとした表情を交わす祖父母。
漂う香ばしい醤油の香り。
僕にとって当たり前の日常でもあるけれど、育ってきた大切な環境でもある。
そしてそれは祖父母の誇り。
「無くしたくない」
社会人になっても手伝っていく時間の中、その想いは強まっていきました。
そんな気持ちの僕の背中を押す様に、外国人が日本の良さに魅了され、日本を訪れる人数が日に日に増えるニュースがいたる所から流れて来ます。その日本の良さは、僕らが当たり前に過ごしていた生活の中で、お茶を飲みながらせんべいを食べる日常の中で培われてきたもの。
良いせんべいが出来た、買って喜んでもらえたと喜ぶ笑顔は、そのせんべいと共に、食べた人を笑顔にする。
これは祖父母が僕に教えてくれた大切な事です。僕の「無くしたくない」という気持ちは、日本を代表するお菓子として全世界の人に興味を持ってもらいたい、食べてもらいたいという夢へと育ちました。
今、僕は、じいちゃんの様に炭火に向き合い額に汗しながら、そんな夢を小さなせんべいに込めています。